ちょっとにいさんよっていきなと、こえをかけたはやどやのねえさん。
わらじにめしにせんたくもの。いろいろあるけどどうだいと、うるさくよこにつきまとう。

いっぽうこももはみちばたで、しゃみせんひいて、ひとしごと。
あんたのうたもうまいけど、おせんのうたにはかなわねえ。
おきゃくみんながそういうと、こもももちょっときにくわない。
いったいおせんてだれなのさ。

けっきょくとまったそのやどや。おこってかえったこももはすぐに、おせんをさがすととびだした。
ちょっとふあんなあさたろう。

おせんをさがしてたずねゆく、こももをおとこがよびとめた。
あんた、おせんをさがしてるのかい。

うるさいやどやのねえさんが、なぜかよこがお、きになるそぶり。
おせんをめぐる、うたもよう。

ゆりねのお仙
にがうりの蔓之助

堀江美都子
大塚芳忠