大阪巡業を終え、東京へと戻ってきた雷神部屋の面々。しかし、今日は何やら普段よりも人が少ない様子であった。それもそのはず、親方や幕内力士の兄弟子たちは、今度はハワイ巡業へ行ってしまっているのだ。松太郎ら幕下力士だけが、東京で留守番なのである。せっかくのハワイへ行く事ができず、不満げな松太郎。いつもより乱暴な稽古で、腹いせに皆を投げ飛ばしていく。ところがその最中、田中が柱に頭を強打してしまった！　さいわい、大した怪我もなく起き上がる田中であったが…、突然、その頭の中に他人の心の声が飛び込んできた。なんと田中は、頭を打った衝撃で超能力を身に付けてしまったのである！

田中の頭の中に、松太郎の心の声が響き渡る。田中は弱いので早く引退した方がいい…。今のウチから引退後の生活を考えるべきだ…。あまりに失礼な松太郎の心の声に、思わず反論する田中。田中が超能力に目覚めた事を知らない松太郎は、考えを言い当てられてビックリ仰天だ。しかし松太郎はそれ以上気にせず、かえって話が早いと、田中の将来を検討し始めるのだった。さて、力士の引退後と言えば、やはりチャンコ料理屋だろう。さっそく松太郎は田中にチャンコを作らせてみるも、その味は至って普通であった。引退するには、もっと美味いチャンコが作れるようになる必要がある。そう言って松太郎は、田中を連れて外へ出るのであった。

チャンコ修行の第一歩に松太郎らが訪れたのは、雷神部屋出入りの八百屋であった。美味い料理を作るには、まず美味い食材を見分ける必要があると考えたのだ。ところが話が進むうち、店主と松太郎がケンカになってしまった。と、その瞬間、再び田中の超能力がひらめいた。脳裏に未来予知が浮かび上がったのだ。このままでは松太郎が店先で暴れ、スイカ割りならぬ、メロン割りを始めてしまう…！　これ以上ココに居てはいけない。田中は慌てて松太郎を引っ張り、次の修業先へと向かうのであった。しかし、続けて訪ねた精肉店や鮮魚店でも、浮かぶのは悪い予知ばかり…。

結局、何一つとして修行のできない二人。だが、そのうちに田中に変化が訪れた。忘れていた過去を超能力で思い出したのだ。お前なら最後まで仕事をやり通せる。そう、故郷の父に励まされた日のことを…。父の言葉を思い出した田中は、松太郎に告げる。もうチャンコ修行はおしまい、引退はしない、と。だが松太郎は、田中の決意をバカにするばかり。そんな松太郎に、ついにキレてしまう田中。その気迫には、さすがの松太郎もタジタジ。慌てて逃げ出した松太郎を追いかけながら、田中は「絶対強くなってみせる。そしていつか、必ずハワイ巡業へいってやる！」そう誓うのであった。