想い人・令子に告白し、あっさり玉砕してしまった松太郎。失恋のキズは深く、この一週間、松太郎はただ泣いて過ごすばかりであった。ろくに食事も取らずヤセ衰えていくその有様を見て、西尾の爺さまは松太郎を叱咤する。しかし、普段であれば食ってかかるような言葉にも、今の松太郎は無反応。どうやら戦う気力さえ失ってしまったようだ。さすがにコレはかなりの重傷、見過ごす訳にはいかないと、松太郎を元気づけようとする幕下力士の仲間たち。しかし、美味しそうな鰻重のニオイを嗅がせても、アイドルのグラビアを見せても、松太郎はまるで反応しない…。

さて、その一方、雷神親方の心情は穏やかであった。松太郎が静かになった事で、雷神部屋に平和な日々が戻って来た為である。だが、そんな雷神親方に猪ノ川が苦言を呈する。こんな事で松太郎が潰れてしまっては、今までの苦労が水の泡、本末転倒ではないかと言うのだ。なるほど、確かにその通り。猪ノ川の言葉に動かされ、松太郎の様子を見に行く雷神親方。ところが、泣いていたはずの松太郎が、いつの間にか行方不明になってしまった。まさか、傷心のあまり自殺を…！？　最悪の事態を想定してゾッとした雷神親方は、部屋の総力を挙げて松太郎の捜索へ出るのであった。

しかし、手分けして町をくまなく探してみても、松太郎は見つからなかった。もしこのまま手遅れになってしまったら…。と、そこで電気屋の展示テレビに流れるニュースが一同の目に入った。なんと、浅草寺の屋根に何者かが登っているのだという。ニュースに映ったその姿は、間違いなく松太郎！　雷神部屋の一同が慌てて駆けつけてみると、案の定、とんだ騒ぎになってしまっていた。飛び降りでもするつもりだろうか。とにかく一刻も早く降ろさないと…。拡声器を借り、松太郎に呼びかける一同。だが、あの手この手で呼びかけてみても、全く効果なし。それどころか、イジけて更に泣き出してしまう始末。もう、どうする事もできないのか…。

と、その時、田中が拡声器を手に取り、普段からは考えられないような大声で松太郎を罵りだした。その口汚さは、気落ちした松太郎さえキレてしまうほど。今すぐブチのめしてやる！　松太郎はアッと言う間に屋根から降りてくると、田中に掴みかかった。だが、そんな松太郎にボソリと田中が告げる。フラれたのは松太郎だけじゃない、と。そう、田中もまた、令子に恋をしていたのだ。田中の言葉を耳にして、拳を収める松太郎。かくして、失恋騒動も一段落。翌日には松太郎も何とか食欲を取り戻すのだった。雷神親方も、無事に本場所を迎えられそうで一安心。だがその裏では、松太郎に敗れた天才力士・近藤が、松太郎打倒の研究を着々と進めていた…。